新釉薬を作りたくて。こんな仕事もやきもの屋の作業のひとつです。

 九年前の今日この時間(2011.3.11.18:30)、停電中で蝋燭を灯し、電気の通っていない炬燵に足を入れ家族で夕飯をとった。時が経つのは早いものだ。

今日は朝9時から窯を焚き始めた。良く晴れて日差しも強い。
九年前の今日は丁度窯出しの日だった。あの想像を絶する”揺れ”でこれは中身(窯中)は全て駄目だというのは予想できた。案の定、女房と二人扉を開けて唖然とした記憶がある。すべて粉々になっていた.....。

さて、窯を焚くにあたって今回は、何年ぶりだろう「テストピース」を作った。つまり新しい調合の新釉薬を試したいので、素焼きの小片に二種類のピースを窯内の様々の場所に置いた。
 今時の陶工がどのように釉薬を作っているのか知る由もないが、弟子時代からこの様に
数種の原料を秤で測り、小片に塗布してゆく。原料の割合は一つの釉薬に何種類かを用意する。そうしないと、一種類ではうまく熔けるとは限らぬので。

自分の窯のどこでどういう風に熔けるかは、長年の体験でわかっている。その予想にうまく反応してくれる釉薬が生まれ出るか?その緊張感が何とも言えない。
小片に施した釉薬が思い通りの結果となっていれば、いわば今後本採用となる。
大量に作るわけである。
窯焚きは季節によって、気温によって、又その時の窯内の棚組みによって結果が異なる。
やきものの醍醐味と言っても良いだろう。
 奥の深い世界である。

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