「半分」の仕事

新年になり早一週間が過ぎた。

三日に素焼きを行い、現在は本焼きへの準備で釉掛けを実行中。

この道に入りついに44年めを迎える。

これまで様々な場所で展示会活動をおこない、いろいろな人たちと出会った。

その都度発表した作品もどのくらいの数になるのかは定かでない。

その当時を思い返す時、発表する場を与えられたことは本当に幸運だった。

陶芸とひと口に言ってしまえばそれまでだが、作家個人のアプローチの仕方は
十人十色。
私は主に「食器主体」にこれまで取り組んできた。今後もそれは変わらない。

師が、こと食器にかけては一言も二言もある方だったので、弟子として当然その
気風は継いでいる。

ただ漠然と器を作るのではなく、ひとつの器でも「決め所」があるはずだ。
そこを外すと、締まりのない食器になる。このような考え方はやはりこの国に於いて
「食の文化」が他国よりも発展していた所以だろう。

現代のように自国以外の料理が当然のように身辺にある、など当時考えただろうか?
TVを朝点けて見ても、芸人だかタレントだかが(男も女も)大口開けて物を頬張り、
「うめぇうめぇ」の大合唱!何とも見ているこちらが恥ずかしくなる光景だ。

しゃっちょこばって食事しろ、とは言わぬが.....。なんともはや、イイ時代になったものだ。

和食文化は確実に遠のいている。かつて和食器の作り方を学んだ者にとっては、「これからの食器」をいかに整えたら良いか思案のしどころだ。
チャレンジ精神いまだ衰えず!頑張ります。

何時の頃からか、私の仕事は「半分」だと思うようになった。

半人前の仕事という意味ではない。食器の作り手である私は誠心誠意を込めてこの
器を作りました。ここまでの役割が私の務めです。
この器を買っていただいたお客様が今度は主役となり、この器を使いこなしてください。
私が半分あなたが半分、それぞれが大切にこの器をあつかえば必ず良き器のひとつに
なるはずでしょう。

これからもそんな食器を作っていきたいと思います。




 

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