師の伝言そしてまた歳の瀬へ

あと一週間程で今年も暮れる。日々の加速度を増して一年が終わる。
時の移ろい、流れが速いのは気のせいだろうか?

ただ気忙しいだけの毎日を過ごす事が、時折むなしく感じる。

来年は56年ぶりの東京五輪。

さぞや又日々お祭り騒ぎのような一日を繰り返すのだろう。

喧騒の東京を頭の中から除外して、自分の足元をしっかり見つめ直す年にしたい。
そうすることがそう思うことが多分最後だろうから。
体力気力が整う折にしっかりと生きていたい。

来年はやきものの世界に入って44年になる。

八丈島での修業時代。師との2年半の思い出。急性心筋梗塞で急逝した師の遺志をついで
はるか九州唐津の地から飛行機を乗り継いで我ら弟子たちを導いてくれた師の師。
島には足掛け6年暮らしたことになる。

この世界で出会った先輩たちもその多くは70歳代後半もしくは80歳代。
病にたおれた方。リタイアされた方等様々だ。

12月も半ばを過ぎて、ひとり作業場で注文品づくりに追われる日々。
轆轤を挽きながら当時の事を思い返している自分に気が付く。

いろいろな事を教わったなぁ。

二人の師からはこの世界の楽しさ厳しさを。「ものづくり」の世界で暮らすとは
どういうことなのかを。
言葉では言い表せないことを、轆轤を回転させながらその中心から得られる物事の
「芯」のようなものを頂いたような気がする。

所作事の世界は先ずその「基本」が大切だ。

基本を疎かにして「応用」に走るのが現代ではないだろうか?

「轆轤の中心が取れてもいないのに先を急ぐな」「手数を減らせ」
「ここで締めろ」(器づくりには急所がある、それを外すな、という事)等々......。

みな今となっては懐かしいことばかり。
またそのような時間を過ごせたので今があるのだろう。これからも忘れてはいけない
事だ。

あれやこれやそれを今年もたくさん手掛けた。来年はまたどんな新器が生まれるやら。

じっくりと仕事に改めて取り組みたいものだ。

みなさん来年もどうぞよろしくお願い致します。



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