やきものは凍る


タイトルの“やきものは凍る”というのは、無論焼き上がった作品が、ではなく、製作途中つまり
乾燥状態の折に、気温が非常に低くなった時起こる現象だ。

離島八丈島でやきものの勉強を終え、栃木の益子で独立した私はその当時、周囲の方達から
ひょっとすると、品物凍るかもしれないから気をつけな、と言われていたのだが、それまで南国の
温暖な気候の中での作業しか知らず、“凍る”という感覚が不明だった。
忘れもしない益子での初冬、仕事場の棚にさしておいた乾燥段階の作品全てを凍らせてしまった。作品も凍ったが、我が背筋も凍りついた!

それから数年、冬場の夜から明け方にかけての対策を施し、異常低温注意報などが発令された折には、ストーブの火を一晩中絶やさなかったものだ。

そのような時間が数年続き、当地での生活リズムも判り始め、難なきを得ていたのだが、
先日ほんとうに久し振りに、乾燥期の作品の一部を凍らせてしまった。

この写真で見られるように、細かな亀裂が縦横無尽に入り、挙句ボロボロと土が剥離してゆくのだ。又大きな亀裂からは裂けてゆく。
もう修復不可能状態、なんです。凍るということは.....。

それほどこの冬はいつになく、寒い、ということの証なんですね。

やきもの、という仕事は四季折々の気象に左右される仕事です。冬には冬の、夏には夏の備えを怠ると結果どうなるのか.....。
各自が身をもって対処する仕事でもあるのです。

時間をかけて作られたものが 壊れてゆく はかないものです。
また返せば、形あるものはいずれは原点に帰ってゆく という事でもあるのですね。

物は人は大切に扱いたいものです。

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